父週


今年最後の歌舞伎座へ行くために
父が上京してきていました。
「毎月決まった予定があると元気が出る。」
と言うわけで、
バスで築地まで行くのが父の一番楽な道筋です。
それでバス停に並んでいましたら
後ろからいきなり声がかかりました。
「旦那さん、今日は風があって寒いねぇ。」
小柄な背中が曲がったおばあちゃんでした。


一寸吃驚したようですが
最近とみに話し好きになっている?父、
直ぐにこやかに
「そうですねぇ、この辺はまたビル風もありますからね。」
それでおばあちゃんの質問攻めが始まりました。
「どこに住んでいるの?」
「どこへ行くの?」
「ご一緒なのはどなた?」・・・当然それは私娘ですが・・・
父は丁寧にいちいち答えています。
一寸面白い風景でした。
「いいねぇ・・・それにしても逗子から一人で出てこれるの?」
「それで旦那さんお幾つ?」
「86歳ですが・・・」


途端にバスに並んで待っていた後ろの人たちから
嘆声?が起きました。
「えぇ〜、86歳?」
「まぁ・・・」
「大正ですか?」
「まぁ、お若い!」
「到底80代とは・・・てっきり70代かと・・・」
これでお分かりのように?
後ろに並んでいたのはおばあさん・おばさんたちです。
最初に話掛けてきたおばあちゃんは80歳ですって。
ってことはもう昭和の人なんですね。


バスに乗ってから父は
「下町の人は気さくに声を掛けてお話できるからいいな。」
と、言っていました。
最も父は姿勢だけはいつもとてもよくて
私もそれだけは見習わなくちゃとは思っているんですけれど。
心なしいつも以上に背筋がぴんと張ったようでした?


ありがたいおばあちゃまたちです!