ひと月


父が又来ています。
父が来ると「おー、もうひと月経ったんだ!」と驚きます。
年毎にひと月が早く過ぎるようです。
毎月父が我が家に上京するようになって7年目になりました。
毎年
「もう上京して遊べるのは今年で最後だな・・・」
と言っていますが。


確かに
歩くのが遅くなりました。
歩き方も危うげになりました。
話もろれつが回り難くなりました。
耳が遠くなってきました。
瞬間の判断が出来なくなってきました。
でも元気にリュっクを背負ってやってきます。


そして相変わらず私の生き字引で
今月の歌舞伎は「忠臣蔵」通しでしたから
教わることは山ほどありました。
最も聞き流している私は
斧定九郎のあの黒の衣装を考案したのが
何代目の誰だったのかももう忘れちゃっていますけれど・・・
道行を三つ教えてもらったことももう忘れていますけれど・・・
娘を教育するにはやはりちょっと遅すぎたようです。


でも遅く来たミーハーである私は
玉三郎仁左衛門を見たくて夜の部にしました。
この二人がダントツに素敵なことだけは私にも分かっています?
玉三郎さんより美しい女形はいないし
仁左衛門さんよりいなせな人もまだ見つけていませんし


6段目のお軽のしっとりとした美しさに見ほれ
7段目のお軽のいじらしさに見ほれ
仁左衛門さんの科白はなんと小気味良く耳に届くかと感心し
姿のよさに惚れ惚れとし・・・


翌日朝起きた父は肩から腕が猛烈な筋肉痛
何で?
何もしていないのに?
玉三郎を見るのにオペラグラスをずーっと
長丁場持ち上げていたからかな?
前の女性が大柄でまたやたら頭をでかくしていたから・・・
邪魔で見るのに苦労したんだ・・・」
まさか・・・でも確かに!
肩より上に手を上げてるなんて事、めったに父には無いことですもの。
それに確かに蜂の巣のような大頭の女性でしたっけ!


帽子なら取ってくださいと頼めるけれど
頭は頼めないしねぇ・・・