えすちゃんが鼻をかんだ!


久しぶりにえすちゃんのお話です。
えすちゃんがお鼻をかめないことはもう話しましたね。
そのえすちゃんが鼻をかめたのです。


おじいちゃんに鼻がかめないと言われてママは焦っていました。
えすちゃんはもう4歳と半分になったのです。
えすちゃんは余り鼻水をたらすほうではありません。
だからといって全く練習のチャンスが無いわけでもありません。
でも、どうしてもかめないのです。


鼻を出すとママは
鼻を紙で押さえて「フン!」って、強く言ってみます。
するとえすちゃんは「ずずずずずー」と言います。
口でずずずずずーと答えるのですよ。
ジャァネ、口で「フン」と言ってみて?
するとえすちゃんはちゃんと口で「フン」と言います。
それを鼻でやってみてね、「ハイ、フン!」
するとまたえすちゃんは口で「ずずずー」


ところが夕飯の時外から帰ってきたわいちゃんに
「お手手を洗って、うがいしてらっしゃい!」と叫んでいた時です。
「うわーん!」と凄い泣き声です。
「うわーん!ママー!大変!うわーん!」です。
えすちゃんが台所に飛び込んできたのです。
えすちゃんは真っ赤な頬に涙がぽろぽろこぼしながら
「大変!タイヘーン!うわーん!」
「どうしたの?」
「とれなくなっちゃったの」
「何が?」
「奥へ行っちゃったの、取ってぇ、とってよー」
うわーンと泣きながら突き出した鼻の中を覗いたママは
「あー!!!大変!」


わいちゃんも突き出しているえすちゃんの鼻を見て
「わぁ大変!大変だー!えすちゃん大変!取れなかったらどうなるの?」
だからますますわいちゃんは
「うわーんうわーんうわーん!」


「鼻をかんでごらん?」
ママは抱っこしてえすちゃんに言いましたけれど、
絶望的な気持ちになりました。
「フンってやって、えすちゃん、フンよ」
わいちゃんも横から言います。
「えすちゃん、フンだよ、フン!」
「ずずずずーうわーん!」


えすちゃんの左の鼻の穴には
わいちゃんの野球ゲームのボールがぴっちり詰まっていたのです。
ママの所に来るまでに取ろうとして
指を突っ込んだり吸い上げたりしたのでしょう。
ボールは鼻のズーっと奥の方にぴったりとはまり込んで
ピンセットも入る隙がありません。
何度も「フン!」に失敗した挙句ママは汗びっしょりになって
えすちゃんは涙でぐしょぐしょになって
わいちゃんは周りを跳びまわって「ママどうするの?どうするの?」


「どうしてこんなことしたの?」
「面白いと思ったんだもの。わーん!」


近所の耳鼻科に電話を掛け捲ったのに
土曜日の夕方とっぷり暮れて出てくれる先生はいません。
やっと出てくれた近所の外科は事情を聞くと
「吸いだす道具が無いんでうちじゃぁ何もできないなぁ。」
その間もえすちゃんは泣いてはすすり上げるのですから・・・
なお更取れなくなっちゃう!


「さぁ、えすちゃん助けてくれる先生はいないのよ。
ママとえすちゃんで取るしかないのよ。」
又すすりあげたえすちゃんのほっぺをぴしゃっと叩いて
「すすっちゃ駄目! サァ、思いっきりフン!するんです。」
片方の手で鼻の穴をしっかり押さえて
片方の手でえすちゃんをしっかり抱いて
ふーん!


「フ〜ン!」


凄い勢いでボールが部屋の端まで吹っ飛んで行きました!
真っ赤な頬のえすちゃんは飛び上がりました!
真っ赤な頬のわいちゃんも飛び上がりました!


ヤッター!ヤッター!えすちゃんヤッター!
バンザーイ!バンザーイ!えすちゃんバンザーイ!
わいちゃんがボールを取りに行って踊っていました。


汗びっしょりになった3人がお風呂に入って
夕飯を食べたのはいつもより一時間遅れでした。


ナイショですけれど
パパもおじいちゃんも何でえすちゃんが
お鼻を上手にかめるようになったのか知らないんですよ。
それにあのボールがなんでママのお宝なのかもね。