山口蓬春さんを始めてしっかり名前と絵を結びつけて
覚えたのは京都に住んでいた頃だった。
京都に住んだのはたったの3年足らずだったけれど、
今思うと不思議な町で妙に文化に親しもう・・・
という気を起こさせる町だったようだ。
あの3年で、私は南座の顔見世に通い、
正月の前進座を見に行き、
井上流の温習会に出かけ、
祇園や先斗町や上七軒の歌舞練場に通い、
小さな美術館めぐりをせっせとしていた。
「神奈川県立近代美術館の葉山で今山口蓬春展をしているのね?」
と、父に電話で話したら、
「おお来るか?何時来る?あそこはいいところだ。」
先週ずーっと父と過ごしていたにもかかわらず?
逗子で父と待ち合わせることにいつの間にかなっていた。
昨日行ってきた。
しかし、名前を覚えたのは「好きだな!」と思ったからで、
私はこの日本画家のとてもモダンな絵に引かれたのだった。
この展覧会には「伝統とモダンの融合」という副題が
付いているのだからやはり見に行かないわけには行かないでしょう?
そして予想通り?とても魅力的なモダンを感じさせる大作が
いっぱい展示されていて、とても見ごたえがあった!
それなのに東京だったら美術展はこの頃どこも
「押すな!圧すな!」になるところなのに
がらがらで実に美しい絵を美しい場所で
気持ちよくユックリ楽しむことが出来た。
信じられないほど海は輝き、波は穏やかで
海に沿って作られているレストランでもユックリできて
遠くからユックリ白い小さな波頭を進めてきて
足元で小さく轟く波の様は見ていて全く飽きなかった。
「安らかな海ねぇ・・・」
「葉山の海岸は殆ど荒れないね。静かな浜だ。」
向かいの蓬春さんの元アトリエ、記念館まで回って、
結局夕日が波を金色のだんだらにするまでいてしまった。
逗子の駅前で別れる時、父は
「楽しかったなぁ・・・楽しかった。」と何度も言っていた。
先月も先々月も父は帰る時も、その後の電話でも
「楽しかったなぁ・・・」を何度も繰り返すようになった。
こんなことでこんなに喜んでくれるのかと思うと・・・
ちょっと・・・
来月もいい役者さんは京都へ行ってしまうけれど、
歌舞伎座取るからね。
次郎さんでまた美味しいお寿司食べようね。