えすちゃんの鼻


もう直ぐお正月が来ます。
田舎のお正月が終って、
実家に帰る前にしておかなければならないことがあるのです。
「一年て早すぎやしませんか?」と、ママはため息です。
去年の冬、
おじいちゃんとママはちょっとした言い合いをしました。
原因はえすちゃんでした。
少し水っ洟を出したえすちゃんの鼻をかませようとしたおじいちゃんは、
紙で鼻をつままれただけで怒り出したえすちゃんに、
えすちゃんがまだ鼻をかめないことに気が付いたのです。


おじいちゃんはママに
「えすちゃんはまだ鼻もかめないのか?
これも躾けのうちだからね。ちゃんと教えなさい。」
と、言ったのです。
ママはむくれちゃって
えすちゃんを捕まえて鼻をかませようとしたのですけれど、
やってみて、えすちゃんがどうしても

かんでくれないのに困り果てました。
何度も教えようとして失敗したママはやけくそで
「パパだって鼻がかめないんだから、これは遺伝だわ。」
と、思うことにしました。


本当ですよ。嘘みたいだけど、パパは鼻をかめないんです。
最も、不思議なことにパパは
風邪を引いても鼻水を出したことがありません。
めったに鼻がつまったことも無いそうです。
でも、本当にたまにですけれど、
鼻をかまなければならなくなると
パパは鼻紙をよじってスクリューみたいに?
鼻の穴の中にねじ込むのです。
さもなければ鼻に紙を当てて搾り出すみたいに鼻をつまみあげるのです。
「えすちゃんもこの手の人だわ。」
と、ママはさじを投げました。


でもおじいちゃんの言葉はママの耳の中で生きていて、
また冬が来る前に教えようと
えすちゃんがたまに鼻を出すとママはとりあえず紙を当てて
「ハイ、フーン」
と、やってみるのですが、
今に至るまで失敗、失敗また失敗!
鼻に触れられただけでえすちゃんは拒絶反応。
ますます頑固に逃げ回ります。
えすちゃんが上手に鼻をかめるようになったら
ママはおじいちゃんの前で
ふんぞり返ってみようと思っているのですけれど。


ナイショですけれど、えすちゃんの鼻は
紙でつまむには本当は小さすぎるんですよ。
おじいちゃん!