世間は・・・!


東京駅までバスで行こうとバス停へ行きました。
バス停には私より少し年上と思われる奥さんがいて、
「バス丁度でちゃったところみたいですよ。」
「あら、そうですか?本数が多いから・・・」
と、にこやかにお答えした途端
それは始まりました。


本当に堰切っをたように見ず知らずの私に語り始めたのです。
私は「まぁ?」と「まぁ!」としか言えずに・・・


お嬢さんが夫に先立たれて子供と残されたこと
淋しさに負けてしまったらしいこと
そのお嬢さんに先ごろ同居する男が出来たこと
中学生になった子供がそれを嫌がること
その男との間に子供が出来てしまったこと
その男の先夫の子供への虐待が始まったこと
それを庇う娘にも暴力が始まったこと
たまりかねて娘が子供を連れてシェルターに逃げ込んだこと
その娘親子が住居を斡旋されて隠れたこと
男が娘の母親(語り手のこの奥さん)を脅し始めたこと
夜中も電話で怒鳴られて眠れないこと
娘の安全のために自分には行き先が知らされていないこと
その男の怒鳴り込みがぱたっと止んだと思ったら
その男が入院していたこと
病気が何か分からないので退院が怖いこと
一日中窓もドアもしっかり二重鍵をかけて閉じこもっていると
自分もおかしくなってきているのではないかと不安なこと
・・・ ・・・ ・・・


何が答えられるでしょう。
私の乗るバスが来て、何も言う暇も無くお別れしましたけど
まるで新聞のニュースのようだ!
事実は小説より奇なり?


気の毒で本当はもっと聞いてあげていた方が良かったのかなぁ・・・と
バスの中で
しゃべっただけ少しでも軽くなっていらっしゃるといいけど・・・と
心が騒いでいました。