退院して一か月半以上になりますが
相変わらずゆっくりした散歩をしています
傷口はとうに癒えているのですが
まだ奥の方が痛む気がするようです
痛みばかりは本人しかわかりませんから
足並みを合わせるようにしていますが
相変わらず後ろをゲームしながらついていく感じ?
ついしゃべりかけて俺の血圧を上げるな!なんて


何も目的がない散歩は物思いを誘発します
父との散歩はおしゃべり三昧で
今思い返すととても楽しかったのですが
チクリと胸が痛むことも思い出します
時々父にお説教されることがあるとつい反発
言わなくてもいいことを言い返したりして
言わなくてもいいいじわる(今に思えば)言ったり
でもお前とこうして散歩できるのが幸せだ!と
いつもいつも言ってくれていましたっけ


先生は胃がんの手術とその後軽い脳梗塞をして
戻ってきたときから歩くのが遅くなりました
相変わらずの大声で元気いっぱいなのですが
歩くのはあっという間に衰えました
サークル終了後に半数の方は飲み会に回るのですが
飲み屋への歩みが遅く、誰かの肩をかりていましたね
私は失礼するので最初肩をお貸しすることもなかったのですが
いつもの飲み屋が家への帰り道なので
(半数の人が席取りに…なんて言って先行したりして)
一度先生に肩をお貸しして分かれ道まで同道しましたら
「実に歩きいい!あなたの肩が最高だ!」
それからは時々
「すいんませーん!途中まで肩を貸してくださーい!」
先生に呼ばれましたね
「なんでこの人の肩は歩きやすいんだろう?」
そしてら誰かが
「彼女、お父さんとよく歩いていたから老人の足並みに
 併せるのが上手なのかもしれませんね」
するとリーダーが
「優しさじゃない?思いやりって言ってもいいかもね」
でも私はその時思ったのですよ…


先生もおしゃべりなんですよ
ちょっと水を向けると昔の舞台の話、演出家の話、俳優の話
楽しそうにいくらでも尽きない泉なんですね
その話を聞いていると…足並みがそろっている
そういうことなんじゃないか?と思いましたね


でも先生は最後まで
「あんたは本当に優しい! 本当にいい人だ、優しい」
なぜかずーっとそう言ってくれていましたね
この夏先生の育てた俳優さんたちによるたった一日の舞台があります
そのご様子を出演するお1人にお伺いしましたら
「もう先生はその舞台も見れるかどうか…
 痴呆が大分お進みになっていてね
 僕は先生とのお約束だから最後まで付き合いますが
 先生の最後の脚本演出(と言っても弟子がするのですが)です
 見に来てやってください
 来てくれていましたよ〜と伝えるだけでも喜びますよ」
そうメールが返ってきました
私と歩くのを喜んでくれた人でしたのに…
なんか淋しくて…